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フランスのぶどう園は、19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて蔓延したフィロキセラ(ブドウネアブラムシ)病などによる災害、技術革新による変化など、その歴史上幾多におよぶ低迷と復興を経験してきました。70年代から90年代にかけては、新たな化学物質やワイン醸造学が生み出した物質、また最新のテクノロジーをぶどう栽培に用いるようになりました。このようなら新技術によって畑での作業は簡易化されましたが、2000年代に入ると土壌や地域、環境やそして人々への悪影響がささやかれ始めました。
環境を大切にするぶどう栽培法の開発
環境に配慮したぶどう栽培法は以前から存在していましたが、改良が重ねられたことで、ワイン生産者の間で新たに環境に配慮した栽培を始める人が増え続けています。要求レベルや、各仕様書に応じて栽培方法の名称は異なります。例えば、節度ある防除、HVE(高環境価値)、オーガニック(有機)、バイオダイナミック、さらには「自然」栽培などです。たとえば、オーガニック栽培はまだまだフランスでは少数派とは言え、長年にわたってオーガニック栽培は増え続けています。2015年、オーガニック栽培はフランス全体のぶどう栽培面積の9%を占めていましたが、2019年には14%まで上昇しています。ロワール地域だけみても同様の上昇傾向が見られます。当地域では、2011年に417件だったオーガニック農園の数は、2019年に736件に増加しました。一部の人々は長年の信念をもって、または他の人々は意識の変化を経て、「よりクリーンな」ぶどう栽培に対する考えが定着しつつあります。
パイオニアの仕事
ここまでたどり着けたのは、エコフレンドリーなぶどう栽培のパイオニアとなった第一陣が進むべき方向を示してきたからです。他の主要なフランスのワイン産地とは反対に、ロワール渓谷は非常に先駆的でした。この地域の人々は、土地とぶどうを大切にし、エコロジー意識の高いワイン製造法を今日にいたるまで体現してきました。Anjou(アンジュー)を始めとする地域の土地価格がとてもリーズナブルなのに惹きつけられ、若い世代がやってきてこの動きに加わりました。ロワール地方ではどのぶどう栽培地域でも、ワイン生産者の魅力的なスピーチにはすばらしい取り組みが見受けられます。たとえばミュスカデにあるJoseph Landron(ジョセフ・ランドロン)やJérôme Bretaudeau(ジェローム・ブルトドー)のぶどう園を歩いてみれば、彼らのコミットメントがいかに実践されているか分かるでしょう。彼らの農園のぶどうの木は美しく、土壌には活力があり、とても豊かな生物多様性が息づいています。ソミュール地区も同様です。Roches Neuves(ロッシュ・ヌーヴ)のThierry Germain(ティリー・ジェルマン)は、2000年からオーガニック栽培を、2004年からはバイオダイナミック栽培を実践しています。これらの人々に加え、他の多くの人々が、自分たちのぶどう栽培地と親密な関係を育んでいます。 彼らのような持続可能なぶどう栽培は、もはや小規模生産者たちの活動に留まりません。Maine-et-Loire(マルヌ・エ・ロワール)のThouarcé(トゥアルセ)にあるChâteau de Fesles(シャトー・ド・フェル)のような大手生産者も加わり始めています。アンジューの最も高い高台にある見事なぶどう畑のオーナー、Gilles Bigot(ジル・ビゴーさ)さんは、HVE認証を受けた農園からオーガニック農業に転換した栽培者です。ビゴーさん:「市場は、ますますオーガニックラベルのワインを求めています」。
近い未来のグリーンなワイン生産!
このムーブメントは今なお進行中です。オーガニックは成長を続けています。公的機関が支援する生物多様性の保全や農薬戦略により、HVE認証などのテーマを掲げるワイン生産者に追風が吹いています。そして、ぶどう栽培者養成機関のカリキュラムには、生態学的側面が明確に含まれるようになってきました。ロワール渓谷では、Amboise(アンボワーズ)やMontreuil-Bellay(モントルイユ-ベレー)の農業高校がこの分野で先駆的な試みを行っています。今後、ますます多くの持続可能なぶどう栽培のビジョンを持つ生産者に出会えることが期待されます。
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