初秋の朝、53フィートの漁船グロ・ルル号の灯りが霧の中に浮かびます。午前5時30分。静かなエンジン音が響き、船が埠頭に近づくにつれてその音は大きくなります。着岸すると、船体が木製のプラットフォームに軽く接触します。トゥルヴィル港の気温は約10度。フード付きのダウンジャケットを着た私は身震いしながら、グロ・ルル号のオーナーであるアルノー・ペルシェイさんと17歳の息子ブリスさんとともに船のディーゼル排気ガスを吸い込みます。長靴を履いた大柄な若い男性2人が船の甲板に出てきました。1人はフード付きの黄色いセーラージャケットを着込み、もう1人はあごひげを生やした赤毛の青年で青と白のストライプセーターを着ています。彼らはグロ・ルル号の船首で黙々と働き始め、一心不乱に力作業を進めています。船首のハッチが開くと船倉の明かりが漏れ、ウィンチが静かに軋むような音を立てながら開口部へと動きます。
入港するとすぐに最初のトロ箱が運び出され、その後も次々に続きます。どの箱にも、一晩で獲った大ホタテ貝がぎっしり詰まっています。

船から陸に荷を下ろす作業、いわゆる「陸揚げ」が始まろうとしています。 入港するとすぐに最初のトロ箱が運び出され、その後も次々に続きます。どの箱にも、一晩で獲ったつやつやの新鮮な大ホタテ貝がぎっしり詰まっています。黄色いジャケットを着た船員が、丁寧かつ手早くトロ箱を1つずつ運び、埠頭に停車している冷蔵トラックに持っていきます。手が赤くなるような寒さの中、アルノーさんと息子が手際よくトロ箱を積み上げていくと、ほんの数分でトラックは満杯になりました。ストライプセーターを着た赤毛の大柄な船員(グロ・ルル号の船長)は、しばらくタバコを吸いながら、ボスと漁船の次の予定について話し合い、 「また明日な!」と声を掛けます。 村の教会の鐘が午前6時を告げる頃には、船と乗組員はこれから24時間続く漁のために出航していました。ホタテ貝漁は仕事というより神業です。グロ・ルル号は30分足らずで荷揚げを終えると、波を切って水平線に向かい、顔を撫でる冷たい風を残していきました。天気は良く、海は凪いでいます。ホタテ貝のシーズンは待ってくれません。
ホタテ貝漁は仕事というより神業です。荷揚げにかかった時間は30分足らずでした。

エキサイティングで危険な職業
10月から5月中旬まで、ペルシェイ家が持つ船の乗組員は週6日のハードワークをこなしていますが、シーズン中の4週間は大ホタテ貝の漁に専念します。許可された区域でトロール網を広げ、海底をさらって、堆積物の中に埋もれている有名な大ホタテ貝を集めます。このような漁法が認められるのは、1日のうち特定の時間帯だけです。大ホタテ貝漁は危険を伴う緻密な作業であり、この美味しい天然貝が見つかる漁場は保護されているため、厳しく規制されているのです。ホタテ貝は、底に金属製の格子をつけ、上にネットをかぶせた網で捕獲します。網がいっぱいになると海面まで引き上げますが、この作業が大きな危険を伴います。少しでもミスをすれば、櫛状の金属に足が引っかかり、海に引きずり込まれるかもしれません。

アルノー・ペルシェイさんは次のように語っています。「海では、36kgのホタテ貝を獲るために2トンの岩を引き上げることもあります。漁獲量も少なく、体力的にも厳しい仕事です。 ホタテ貝は船の甲板で選別し、特大サイズ(直径約10~13センチ)だけ残します。小さなホタテは海に戻して成長を待ちます」選別したホタテはトロ箱に入れ、冷温の船倉で保存します。
漁は危険を伴う肉体労働なので、長く続けることはできません。

市場へ輸送
午前6時15分。私たちはトラックに戻り、トゥルヴィルを横切ってペルシェイの製氷工場に向かいました。町はまだ眠っています。アルノーさんはスコップ片手に、氷の入った大型容器に素早く乗り込みます。息子のブリスさんがトロ箱を運んで積み直している間に、アルノーさんはクラッシュアイスをスコップですくって箱一つひとつに入れていきます。氷で覆えば、ホタテの鮮度を保つことができるのです。このトロ箱を再びトラックに積み込み、近隣のドーヴィル(ノルマンディー沿岸で最も歴史の古い市場のひとつ)に向かいます。市場では、すでにアルノーさんの妻と両親が売店の準備に追われていました。
午前7時。寒さで頬を赤くした一家は、角のカフェでコーヒーとクロワッサンを楽しみながら、しばらく暖を取ります。アルノーさんは寡黙な生粋の漁師です。控えめな仕草や言葉で、大ホタテ貝漁にかける情熱を静かに語ってくれました。42歳の彼は近いうちに操船を息子に任せて一線を退く予定です。 「漁は危険を伴う肉体労働なので、長くは続けられません」 海の仕事は大変ですが、それもお客様に世界最高の天然ホタテ貝を味わってもらうという大切な目的のためです。 「大ホタテ貝の好きなところは、ほのかに甘くヘーゼルナッツのような風味と食べやすさですね」と、アルノー・ペルシェイさんは笑顔で語りました。

午前7時30分。分厚いクラッシュアイスの上に大ホタテ貝が入った箱がいくつも連なり、その隣にはヒメジ、舌平目、カレイ、イカが並んでいます。まだ夜が明けたばかりだというのに、家族経営の売店は早朝の客を迎える準備ができていました。
その日の注文に供えた準備も忙しくなります。2つ、4つ、8つ、10。 ペルシェイ一家が素早く数を数えて袋詰めすると、何十もの袋がこすれあってギシギシと音を立てます。この日の漁獲量はなんと730kg近くありました。ほとんどのホタテ貝は地元のレストランに送られます。数時間後には、有名なレッドラベルの大ホタテ貝がノルマンディー中の食卓に並ぶでしょう。ホタテ貝が港に到着してから最初のお客の買い物かごに入るまで、わずか3時間しか経っていませんでした。
生で食べると最高!
若いブリスさんが大ホタテ貝を手に持ち、ナイフを貝殻の間に入れて開いてくれました。貝殻の中央には立派な貝柱と貝ひもが鎮座しています。 「セーヌ湾産の大ホタテ貝に勝るものはありません」と言いながら、生の貝を渡してくれます。これほどレアなごちそうを断るなんてできません。 ほのかな甘味、ヘーゼルナッツのような風味、そして上品な潮の味。とろけるような舌触りのホタテ貝です。これには感動しました。獲れたての大ホタテ貝は、これまでに食べた中でもダントツの美味しさでした。

天然の大ホタテ貝を守る
大ホタテ貝は天然ものしかないため、繁殖地を保護し、乱獲を防ぐことが重要です。そこで、セーヌ湾やノルマンディーの漁場に生息する大ホタテ貝の資源量は、科学者が名を連ねる委員会が年に1回評価しています。その結果を踏まえて、以後の漁期は厳しく規制されるのです。あらゆる漁船をGPSで追跡するシステムにより、所定の日に許可された区域で漁を行っているかどうかを監視します。さらに、船の大きさに応じて、1回の漁で獲ってよい最大量が決められています。毎年、セーヌ湾の5つの漁場のうち1つは漁が禁止されますが、これはホタテ貝が獲れるほど大きくなるまでに2年以上かかるためです。

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