古(いにしえの要塞に守られ、低温でゆっくり熟成されるマルセル・プティットのコンテこうして生まれる至高の味わいは、世界中のチーズ愛好家の心を掴んで離しません。お供にはもちろんジュラの白ワイン。見どころ満載の要塞を訪ねてみましょう!

Jura Comté Marcel Petite 3

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ジュラ地方を代表するチーズ、コンテ。プティット家はこのチーズを5世代にわたり作り続けてきました。しかしコンテの歴史はこれよりずっと長く、その起源は実に700年も前に遡ります。

© ©Louis-Laurent Grandadam

伝統を継承

今に受け継がれるコンテの特徴の一部は、中世以降ジュラ高地に定住した(つまり、寒い冬もここに残ると決めた)人々が数世紀もの年月をかけて作り上げてきたものです。当時の農民は小さな自家製チーズを作っていましたが、農場主は彼らの牛乳を集め、長期保存可能でもっと大きな加熱圧搾タイプのチーズを共同生産しようと考えました。現在のコンテの巨大なサイズはそんな当時の製法の名残りです。業界の構造もまたしかりで、共同生産方式も今なお健在。毎日集めた牛乳を混ぜ、乳酸菌スターターとレンネットで凝固させ、型に入れてそこから取り出すまでの製造工程を小規模の協働組合やフリュイティエール(チーズ製造所)が担っています。牛乳の生産は酪農家、これをチーズに加工するのはフリュイティエール、熟成段階は熟成士(または酪農家兼卸売商)。このように多くの人の手を経て作られるコンテですが、メゾン・マルセル・プティットが担うのは最後の熟成工程です。集約農業が幅をきかせ始めた1960年代、現在の所有者の祖父は時代に逆行しながらも長期熟成にこだわりました。この手法ならではの絶妙な味わいを守ろうとするその姿勢は賞賛すべきものといえるでしょう。

© ©Louis-Laurent Grandadam

コンテの「大聖堂(カテドラル)

そんな彼が見つけた理想的な場所、それがオー=ドゥー地方マルビュイッソンにほど近いサンタントワーヌの要塞でした。標高約1,100メートルのなだらかな山の頂へと続く小道を辿ると、その先にコンテ熟成専用の「大聖堂(カテドラル)」が姿を現します。室温6~9℃に保たれた迷路のように続く熟成室で、10万個ものチーズが静かに出荷の時を待つその光景はまさに圧巻。その後、メゾンの哲学はほとんど変わっていません。原産地統制呼称(1956年認定)に続き1996年に原産地保護呼称の認定を得たコンテには4ヵ月以上の熟成期間が義務付けられました。熱意溢れる熟成庫責任者クロード・クリー氏とそのスタッフは、この重要な最終工程に10ヵ月以上を費やします。

© ©Louis-Laurent Grandadam

時の過ぎ行くままに

チーズの複雑な香りを引き出すには時間が必要です。この要塞には、原産地呼称地域内160ヵ所のフリュイティエールのうち山間部に位置する約35ヵ所で作られた熟成前のコンテ(その大半はモンベリアード種の牛の乳を使用)が届けられます。モミノキの板の上に並べられたこれらのチーズにブラシをかけて磨き、加塩し、ひっくり返すという作業を何度も繰り返し、定期的に味見して、苦味、酸味、甘味、塩味のバランスからその熟成度を判断します。この段階に欠かせない道具がソンドゥ。柄の部分でチーズを叩いてその響きを聴き、柄の反対側をチーズに突き刺して中心部の味わいとテクスチャーを確かめます。このノウハウを身に着けるには長年の経験が必須と言ってよいでしょう。これぞ忍耐の美学、派手さはなくとも知名度の高い(顧客数は世界40ヵ国に900以上!)メゾン・マルセル・プティットならではの専売特許です。最後にもう一つ、おまけの耳より情報を。サンタントワーヌの要塞は見学可能です!コンテを愛してやまない皆さん、一度訪れてみてはいかが?

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