ポン・レヴェック ~ フランスを代表するチーズに隠された秘密

By Marie-Aline Prevost

同じノルマンディー産のカマンベールとは似て非なるポン・レヴェック。その赤みを帯びた黄色い表皮や干し草の香り、そしてあのクリーミーなテクスチャーを生み出す極意は? E. グランドルジュ社のチーズ工房に運び込まれた生乳がどう変化していくのか見ていきましょう。

Boxes of Pont L'Evêque

ベースとなる生乳

朝、シェネイ牧場で搾った生乳がE. グランドルジュ社に届けられると、その日のうちに同社のラボで分析してその品質を確認します。ノルマンディーの原産地保護呼称(AOP)を冠する高品質なチーズ専用のこのミルクが製造工程で40 °C 以上に温められることはなく、そのため完璧な衛生状態を確保しなければなりません。

ラボのゴーサインが出ると、この生乳は翌朝ポン・レヴェックの製造工程に投入されます。その加工段階を見学していきましょう。工房の訪問は、まず更衣室での着替えからスタート。製造室に足を踏み入れる前にまず白衣を身につけ帽子をかぶり、シューズカバーを着用しなければなりません。ここでは最高レベルの衛生基準に則した品質保証に細心の注意が払われていますが、伝統的なチーズの品質を支えるのは最先端の技術です。室温は28 °Cと暑く、湿度も90 %に達します。まずはレーンの上を次々と移動していくミルクの入った小さなトロッコに、生乳を凝固させるレンネットを投入!次いで最初の機械がレンネットを加えたミルクを丁寧にかきまぜて凝固を促します。

 生乳が製造工程で40 °C 以上に温められることはなく、そのため完璧な衛生状態を確保しなければなりません 

 

フランス、リヴァロットのE. グランドルジュ社チーズ工房

トロッコの前進にあわせ金属製のアームがカード(凝乳)を規則正しく細分し、レーンの上で何度かゆっくり攪拌して浮遊状態をキープ。「カードが水分過多にならないように気をつけます。緩すぎるチーズになってしまいますから」と説明してくれたのは、案内役のセシル・ル・マルテルさん。

チーズの出来を左右する職人技

次にホッパーを使ってカードを2回圧縮し、しっかりと水切りします。

そしてここからが肝心。職人がカードを均一に型詰めしますが、素早く繰り返されるその技は、型から取り出した時のチーズの重さや硬さ・柔らかさの絶妙なバランスなど、最終的なチーズの品質に大きく影響します。続いてカードで満たされた型を機械で3回ひっくり返し、ワゴンの上に幾重にも並べられた網棚の上で乾燥させます。最初の工程からここまで約45分。シェネイ牧場のイングリッドさんが育てた乳牛から搾ったミルクは、いよいよチーズへと変貌を遂げます!

水切り室では一晩かけてチーズの水分を除去。翌日、チーズを型から外して塩水に漬け、換気装置を備えた熟成用乾燥室で乾かします。残るはラベル貼り工程。このラベルで各家庭の食卓、あるいは地球の裏側からも製品のトレーサビリティを確認できるというわけです。

ポン・レヴェックの秘密

乾燥室で熟成中、ポン・レヴェックには一度「ソースがけ」(スターターと水の混合液を手作業で噴霧)を行います。あの麦藁のように黄色い特徴的な表皮はこの工程によるもので、こうしてウォッシュタイプのソフトチーズに分類されるポン・レヴェックが作られるのです。

AOPに定められる21日間の熟成期間中、ほぼ毎日チーズをひっくり返します。重さが200 ~250gになった段階で、形状と密度を最終チェック。専用の紙に包んで箱詰めしたら、運送から販売店での保管段階で自然に熟成が完了します。使用される箱も同じ地域で製造され、多くの場合地元産のポプラを使用。つまり外箱も中身も「メイド・イン・ノルマンディー」!

 すべての人に等しく愛されるそのわけは、高度な技の結晶、つまり熟成度を問わずひたすらクリーミーなその味わい――エリー・ル・コルディエ、1622年 

パッケージに包まれていてもほのかに香る、独特な干し草の匂いとアンモニア臭がたまりません!赤みを帯びた薄黄色い表皮はとても滑らかな外見。正方形のチーズの対角線上にナイフを入れると現れる断面は柔らかくクリーミーで、所々に小さな気泡が見られます。クリーミーなところを存分に味わいたいという方は表皮を取り除き、クリスピーなパン・ド・カンパーニュのスライスに乗せるだけでOK。匂いの強さとは対照的にとても優しいアロマが口の中に広がり、クリーミーなテクスチャーの中にバターやヘーゼルナッツの風味が感じられます。

これぞ至福の味わい!

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