料理の仕上げに使うことで、その良さが際立つフランスのバター
フランスの伝統的製法で作られているバターは、発酵バターです。バターでも、AOP(原産地保護呼称)認証を受けている有名な産地がいくつかあります。ノルマンディ地方のイズニー、シャラント・ポワトー地方のエシレとドゥー・セーヴル(同地方は地方としてのAOP認証もあります)、ブレス(ローヌ・アルプ、ブルゴーニュ、フランシュ・コンテにまたがった地域)です。
製法は、まず、遠心分離器などで、生乳からクリーム分を分離し、そのクリーム分に乳酸菌を加えて発酵させます。さらにそれを攪拌器で攪拌して練り、バターにします。出来立てのバターには、ほのかな酸味と乳酸菌の香りが感じられるそうです。
かつては、時間をかけてクリーム分を分離させてバターを作っていました。そのため、自然に乳酸発酵していました。それを攪拌してバターにしていたのです。だから伝統的なものは発酵バターなのです。
バターの風味がとても大事なクロワッサンなどの場合、やはりAOP認証のフランスの発酵バターを使用すると格段に風味が良くなります。
なお、日本で一般的に販売されているバターは、発酵させずに生乳を攪拌することで作られています。
フランスの発酵バターは、日本の一般的なバターとは味わいの質が違います。料理に使った場合、仕上がりの味の厚みが違ってきます。仕上げに使うことで、その良さが際立ちます。
ご提案した「からすみバターと海苔バター」は、火を通した季節の野菜やキノコを2種の合わせバターで味わっていただくものです。
カラスミバターでは、魚介系の味わいとのバランスを取るために、焦がしバターにして合わせました。焦がしバターにすることで魚介系の香りとの相性が良くなります。
海苔バターの場合は、海苔や海藻の磯の香りとのバランスは悪くないので、そのまま合わせました。カラスミに通じる風味があるといわれるミモレットを添えたのは、合わせて味わってみてほしかったからです。
フランスのバターは、味の厚みや香りを意識するなら、仕上げに使うことで、より効果を発揮させることができます。最後に使うと香り高く、おいしい仕上がりの料理になります。
ステーキを焼く時も最初から使うのではなく、仕上げに少しフランスのバターを加えると、グッと風味が良くなります。
(アニスシェフ清水氏インタビューにより記事構成)
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