カヌレやダッコワーズがフランスの地方菓子というと、驚く日本人がけっこういます。すでにフランス菓子として日本での地位を確立したこれらのフランス地方菓子。実は独特のスタイルで日本に広まっているのです。
まず、ボルドーの銘菓、カヌレ。これはなんとパリっ子たちも知らないうちに日本にやってきました。ブルターニュのクイニー・アマンもそうです。現地で修業したパティシエたちが、同時に作りだした結果、あちこちの店で見られるようになりました。カヌレが日本で話題になった頃、パリの地方物産展を訪れたことがあります。そこにボルドーのカヌレ屋さんが出店していたのですが、パリっ子たちは、真っ黒のカヌレにいぶかし気なまなざしを向けて通りすぎるだけでした。
ダッコワーズは、フランス南西部にあるダックスという温泉で有名な町があり、そこで作られているお菓子です。本来は、平たく大きな円盤状のお菓子ですが、それを楕円の小さい形にして売り出したのは日本人のあるパティシエでした。土産菓子文化が発展している日本では、一人分ずつ包装して売ったほうが売れるからです。
これらの地方菓子は、様々な要因で生まれました。大きく分けると以下に分けられます。
1.その土地の産物でつくられた。
2.民族の移動や婚姻、土地の占領などによって伝えられた。
3.修道院で作られ、広まった。
土地の産物で作られた代表的なものには、ノルマンディーのりんごのお菓子、バスク地方のガトー・バスクや、ペリゴールのクルミのタルトなどがあります。民族の移動によりもたらされたものには、フランドル地方からブルゴーニュ公国に嫁いだマルグリット王妃が持ち込んだパン・デピスや、アラブ人が伝えた南西部のクルスタッド・オ・ポムや揚げ菓子、ドイツの侵略によってドイツの食文化が入ってきたアルザスでは、チーズケーキやフォレ・ノワール、リンツァートルテが伝えられました。また、修道院で作られていたものには、ボルドーのカヌレや各地のマカロンなどがあげられます。
このように、フランスのお菓子といってもさまざまなルーツがあり、それらはフランスという国の風土や歴史そのものでもあるのです。
Colaborador
フランス菓子・料理研究家