南フランスのラングドック・ルシオン地方では、「シャルドネ」や「カベルネ・ソーヴィニヨン」など有名なワイン用ブドウ品種がひと通り栽培されています。
フランス産品種ワインのリーダーたるIGPペイ・ドックワインで品種別の特徴をつかんでみませんか?
自然と自分の好みが浮かび上がって、ワイン時間がさらに充実しますよ!
IGPペイ・ドック ナビゲーター
大越基裕さん
ワインテイスター/ソムリエ
フランス料理店「銀座レカン」でシェフソムリエを勤めた後、独立。フランスをはじめ世界中を回って得た経験や知識をもとに、ワインコンサルタントや店舗ディレクターとして活躍する。
また外苑前にモダンヴェトナミーズレストランAn Diも経営する。
ブドウ品種のきほんはペイ・ドックから
定められた地域で、定められた生産方法にのっとって造られていることが証明されているワイン、「IGPペイ・ドック」。
品質と原産地を保証するため、「カイエ・デ・シャルジュ」という仕様書によって収穫や醸造にまつわるルールが細かく制定されており、IGPペイ・ドックワインとして認定されるワインはすべてプロのテイスターによる官能検査を受けています。いっぽうで使用できるブドウ品種はかなり自由。なんと、58もの種類が公式に認められています。
IGPペイ・ドックワインだけで世界を代表する品種を知ることができるなんて、まるでブドウの見本帳みたい!
「そう、これはスゴイことなんですよ。ひとつの地方でこんなにたくさんの種類のブドウを栽培できるのは、他エリアではなかなか見られません。IGPペイ・ドックワインの産地には海に近い平地もあれば、高い山もあります。バリエーションに富んだ環境だからこそ、素晴らしいワイン産地になるのです」
とIGPペイ・ドックワインの強みを語るのは、ソムリエの大越基裕さん。
そこで、58種類のなかでも特に代表的な12のブドウ品種を大越さんに紹介してもらうことに。
「IGPペイ・ドックワインは、全体的に最初の口当たりがやわらかい。でも、飲み込む頃にはブドウ品種の個性がちゃんと味わえます。ピノ・グリはやさしさ、ソーヴィニヨン・ブランは酸、ヴェルメンティーノは塩気……といったように、後半でブドウの特徴が広がってくるのです」 (大越さん)
IGPペイ・ドック presents
12 のブドウ 味わいリスト
白ワイン用品種×6種
Sauvignon Blanc ソーヴィニヨン・ブラン
レモンやグレープフルーツの香りが圧倒的。柑橘の要素は、この品種ならではの特徴だ。より北の産地では青い香りが強く出るが、IGPペイ・ドックワインの産地は比較的温暖なのでセルフィーユ、ライムバジルなどやさしいハーブのイメージだ。味わいは、フレッシュな酸が全体を引っ張っていく感じ。
Viognier ヴィオニエ
ヴィオニエといえば、アロマティックなブドウ品種。やはり、白桃、アプリコット、ユリの花のような香りが華やかだ。果実が少し熟したような感じ、また凝縮感があり、最後にはほのかに苦味の余韻が残る。ウリのようなグリーンな香りもあるので、ハーブやわさびを効かせた料理と合わせるのが面白い。
Pinot Gris ピノ・グリ
「ピノ・グリは甘めで、イタリア発音のピノ・グリージョになると辛口」というイメージが一般的な品種。とはいえIGPペイ・ドックワインのピノ・グリは辛口で控えめな酸、甘味ではなく丸みがあり、いわば「やさしい味」。白桃やかりんとともに森林を感じさせる香りもあり、いい意味でスモーキー。
Macabeu マカブー
もともと黄色い花や密を連想させる香りを持つマカブー。IGPペイ・ドックワインのマカブーの場合、熟した果実の香りをベースにタイムや菩提樹など南仏らしいハーブの香りが加わる。酸は穏やかで、苦味は心地よい。凝縮度が高くてボリューム感がある。飲むと気持ちがポジティブになる味わい。
Vermentinoヴェルメンティーノ(ロール)
南フランスやイタリアの代表的な品種で、地中海など海に近いエリアで多く栽培されている。IGPペイ・ドックワインのヴェルメンティーノは柑橘や白い花が強く香る。ほどほどの酸味で穏やかな印象があるけれど、フレッシュ感はしっかり。後から塩気やビターなニュアンスが追って出る。
Chardonnay シャルドネ
フランスの他エリアと比べ、IGPペイ・ドックワイン産地で造られるシャルドネはトロピカルの要素が特徴的で、パイナップルや黄桃の香りが広がる。バターのようなニュアンスの香りもこの品種で作るワインの特徴。樽で貯蔵することで、味わいの骨格が強くなる。やはりIGPペイ・ドックワインのシャルドネも樽のおかげで深みが増し、果実味や酸とバランス良。
赤ワイン用品種×6種
Cabernet Sauvignon カベルネ・ソーヴィニヨン
品種特有のカシスやピーマンの香りにIGPペイ・ドックワインらしいブラック・チェリー香がふんわりとまとわり、甘やかさを連想させる。凝縮感があり力強いから、飲み応えあり。と同時に果実感や酸がうまく内包されて、全体としてはやさしいバランス。余韻の清涼感あるミント香に、またカベルネ・ソーヴィニヨンらしさを感じる。
Alicante Bouschet アリカンテ・ブシェ
桑の実のような野性味を持つ。ワインの黒い色調から察せられるように、味わいはポリフェノール量が多くてややドライ。口当たりはなめらかながらも、凝縮感がある。赤身の肉のようにモグモグと噛み応えのある食材、またはコッテリとした油脂多めの料理と合わせると相性がいい。
Merlot メルロー
ボルドー系品種として知られるメルロー。東西に長く広がるラングドック・ルシオン地方では、正統派の重厚赤から軽快なロゼまで、メルローの解釈も生産者次第で自由自在だ一般的にメルローは、チェリー、ストロベリー、ブラックカラントなどの赤い果実のアロマに、植物や時にはスパイシーな香りが加わった、丸みのあるワインを生み出す。たとえば珍しいメルロー・ロゼの場合、ややチェリーの甘い印象を持たせつつ飲み応えもあるタイプも。
Petit Verdot プティ・ヴェルド
ブドウが熟すまで日数がかかる品種。寒いエリアでは熟しきれないまま収穫することもあるが、温暖なラングドック・ルシオン地方ではきちんと熟したものが使われるため、この品種ならではのポテンシャルを完全に引き出せるのが強みだ。ピュアなプラムの香りが圧倒的で、凝縮感がありしっかりとした味わい。
Syrah シラー
ブラック・チェリーやプラムにカカオ、そしてほんのりスパイシーなのがこの品種ならではの香り。スパイシーとひとことで言っても、もっと涼しい産地で出てくる胡椒の香りより、クローブやシナモンがミックスして香ってくるのがIGPペイ・ドックワインらしい。味わいは、果実味と酸のコントラストがしっかり。
Pinot Noir ピノ・ノワール
ブルゴーニュ地方の伝統的な品種、ピノ・ノワール。ブルゴーニュより南に位置するラングドック・ルシオン地方では、ピノ・ノワールのエレガントさを保ちつつ、よりカジュアルなスタイルを実現している。若いときにはラズベリーやキャンディの香りがしてチャーミング。口当たりはやさしいまま、フレッシュな酸が伸びていく。
IGPペイ・ドックワインのエレガントさとブドウの個性を楽しんで
「IGPペイ・ドックのワインを品種別に飲み比べると、とくに果実味の部分で個性が大きく出てきます。そして酸とのバランスなどで、『ああ、このブドウ品種らしいな』と判断しやすいんです。どのブドウもよく熟して凝縮感があるけれど、ワイン自体はけして甘すぎたりしないのがまたIGPペイ・ドックワインらしさでもあります」(大越さん)
近年はどこも次第に果実感を控えめにする風潮となっていますが、長年カジュアルワインの生産地であり続けてきたIGPペイ・ドックワイン産地では、ひと足お先にエレガントなカジュアル路線を完成させていたのです。
普段、ただなんとな~くワインを選んで飲んでいても、なかなか自分の好きな味が掴めなかったり、ワインショップでうまく選べなかったり――
やはり、まずは品種ごとの特徴を知っておくのがベター。
自分のなかにひとつのモノサシが完成しますから、自分の好みが簡単に把握できてワインが選びやすくなるんです。
ブドウ品種の個性を大切にするIGPペイ・ドックのワインを飲み比べ、品種の世界やIGPペイ・ドックワインの世界、もっと探検してみましょう!
(左から)
白ワイン
「ドメーヌ・クードレ ヴィオニエ 2020 IGPペイ・ドック」
「アルマ・セルシウス シュヴァリエ・ド・カイユス シャルドネ 2019 IGPペイ・ドック」
ロゼワイン
「ドメーヌ・ド・ラ・ボーム レ・ヴィーニュ・デロイーズ ピノ・ノワール ロゼ 2020 IGPペイ・ドック」
「カステル ロシュ・マゼ メルロー・ロゼ 2019 IGPペイ・ドック」
赤ワイン
「JMCS モンターニュ・ノワール シラー 2018 IGPペイ・ドック」
「ユーロヴァン ファンタジー カベルネ・ソーヴィニヨン 2019 IGPペイ・ドック」
IGPペイ・ドックワインをもっと知りたくなったら
公式HP https://www.paysdoc-wines.jp/home
Colaborador
ワインライター