8月から、フランスのワイン生産者はちょっとした厳戒態勢に入ります。新しいヴィンテージの到来を告げる収穫が始まるからです。冷涼な気候のオーヴェルニュ地方で新たにワイン生産者となったヴァンサン・マリ(Vincent Marie)のぶどう畑では、秋の初めにぶどうを収穫します。
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トップスタート
10月のある日、フランス中東部クレルモン・フェランから15kmほど南にあるヴァンサン・マリのワイナリーは静かな活気に満ちていました。この日は、1年間の労働の集大成であるぶどうを収穫する日。数日間の厳しい作業が続く、実りの秋の感動のひとときです。
「迅速かつ正確に作業しなければなりません。ぶどうが熟したら、収穫まで待ったなしです。激しい雨や日照りに見舞われたら、ぶどうの品質はたちまち損なわれてしまいますから」とワインの造り手ヴァンサンは説明します。
ぶどうの熟度は食感と味で判断されますが、こうした感覚的な尺度に加えて、発酵中にアルコールに分解される糖分の量を正確に計測するために、ラボで分析にかけるワイン生産者もいます。「良いぶどうは、良いヴィンテージの前兆です」とヴァンサン・マリは言います。
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© ©PHILIPPE VAURÈS SANTAMARIA
不測の事態
2021年はフランスにとって決して楽な1年ではありませんでした。
4月には、フランス国内のぶどう畑の大部分が激しい霜の被害に見舞われ、豊作の望みは消えてしまいました。地域によっては、収量の30%から100%まで失った生産者もいたほどです。ヴァンサン・マリのぶどう畑はというと、幸いにも霜害を免れはしましたが、鳥の旺盛な食欲や、べと病の進行といった問題と格闘していました。とはいえ、2000年代初頭に生まれ故郷のノルマンディー地方で自然派ワインと出会ってからというもの、幾多の困難を乗り越えてきたヴァンサンはひるむことはありません。
当時、自然派ワインの虜となった彼は、最初にテイスティングクラブを設立し、時を待たずにフランスの自然派ワインの名手たちが集うサロンをも開くようになりました。「この業界に惚れたんです。数年後、スポーツブランドで物流マネージャーの仕事をしていた私は、すべてを捨ててワインを造ろうと決心し、まだ土地が手に入りやすかったオーヴェルニュにやってきたのです」。彼の畑は今日4.5ヘクタールあり、ピュイ・ド・ドーム県のヴォルヴィック周辺に広がっています。
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© ©PHILIPPE VAURÈS SANTAMARIA
ぶどうの木からワインセラーまで
収穫の日、みんなで軽食を済ませると、季節労働者たちは仕事に戻ります。毎日、12から14人のぶどう摘み隊(2021年はほとんどが女性)がぶどうを摘み、運搬を担当する2人のポーターが、ぶどうで満杯になったメッシュのプラスチックコンテナを麓まで運びます。
ぶどう摘み隊の方は仲良くぶどう樹の間に分け入り、エピネットと呼ばれる、剪定ばさみより刃の鋭い小ぶりの採果ばさみで房を切っていきます。きれいな房だけを収穫し、腐っているようなぶどうはすべて足元に残します。
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© ©PHILIPPE VAURÈS SANTAMARIA
ヴァンサン・マリのぶどう畑では、6日間をかけて手摘みでぶどうを収穫します。手摘みは重労働ですが、一年を通して自然を尊重しながら手入れされたぶどうの木々に、機械を入れるわけにはいきません。
この日収穫された100ケースほどのコンテナはセラーに運ばれます。中には、0.5ヘクタールのぶどう畑で採れたオーヴェルニュ産ガメイが詰まっています。濃い色のジューシーでまろやかなこのぶどうから、キュヴェ「マグマ・ロック(Magma Rock)」の新ヴィンテージが生まれるのです。
ヴァンサン・マリのキュヴェはすべて区画ごとに造られていて、異なる区画のぶどうをブレンドすることはありません。「それぞれの区画に特有のテロワールや歴史があり、私はそれを守りたいのです」。醸造後、彼の造るワインの7~8割は、主にカナダとアメリカの市場に輸出されます。フランスのワイン愛好家が嫉妬するのもうなずけます。
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© ©PHILIPPE VAURÈS SANTAMARIA
Contributor
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