灰色がかった皮を持つサン・ネクテールチーズは、今や最高のフランス親善大使です。そのチーズ作りの秘密を探るべく、5世代にわたって、牛の生乳からサン・ネクテールチーズを作っているベルティネ(Bertinet)さんのチーズ工房を訪ねました。パトリシア・ベルティネさんと、パトリシアさんの義息で後継者のニコラさんのお話しをうかがいましょう。

In search of Saint Nectaire cheese_Taste France Magazine

2つの AOP(原産地保護呼称) 

サン・ネクテールは、欧州で初めてAOPフェルミエチーズとして認定されたチーズです。2017年には14,000トン以上の売り上げを記録しました。フェルミエチーズの原材料の生乳は、単一の牛の群れから搾乳されたものでなければなりません。一般的な乳製品のAOPは、様々な供給元の低温殺菌牛乳を使って酪農場で製造されるので、この点が異なります。サン・ネクテールは欧州で最も小さなアペラシオンの一つで、リヨンの西に位置するオーヴェルニュ火山地域自然公園の中心部、ピュイ・ド・ドーム県とカンタル県の山あいの69のコミューンで作られています。直径21cm、高さ5cmというサイズの規定も、AOPサン・ネクテールの特徴です。

© ©PhILIPPE VAURÈS SANTAMARIA

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気配り 

サン・ネクテール作りはベルティネチーズ工房「GAEC de Bertinet」の家業です。彼らは5世代にわたって、先祖代々から受け継いだノウハウと動物たちを大切にしながら、丸い生乳チーズを作ってきました。標高1,000mにあるこの農場には100ヘクタールほどの牧草地があり、初霜が降りるまでの少なくとも6カ月間、牛がのびのびと過ごします。チーズの品質は原料である牛乳の品質によると言っても過言ではありません。ベルティネ家は、その大切な牛乳を作ってくれる牛に与える飼料の品質も、同じくらい大切にしています。さらに、牧草地をローテーションして、牝牛たちの食べる草丈を常に適切な高さに保つように気をつけているのです。

© ©PhILIPPE VAURÈS SANTAMARIA

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最高のチーズができるまで 

パトリシアさんと義理の息子であるニコラさんは、数人の従業員とともに、1日2回、午前4時と午後5時に、牛乳をチーズに加工する作業をおこないます。東にサンシー山塊、南にカンタルの山々、西にコレーズを望む絶景に囲まれながら、毎日約60個のサン・ネクテールを作ります。一つのチーズには、13~14リットルの牛乳が必要。搾乳後すぐの温かい牛乳をレンネットで凝固させてできた凝乳をスライスし、攪拌してホエーを取り除き、成型します。その後、フレッシュなサン・ネクテールの両面に粗塩をつけ、湿らせた麻布でチーズをひとつひとつ丁寧に包み、再び型に戻します。その後、プレスして、自然な水切りが完了です。

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型から抜かれたベルティネ特製チーズは、デリケートな熟成過程に必須の湿度が保たれた部屋に運ばれます。ニコラ氏が、湿度を調整するライ麦の藁の上で28日以上かけて熟成したサン・ネクテールを見せてくれました。熟成が完了したチーズは、フランス国内外の最高のチーズ専門店に向け出荷されます。シリアルブレッドにのせて、シノンの赤ワインやポムロールと合わせても絶品ですし、セミドライのシードルとも完璧なハーモニーを奏でてくれるでしょう!

© ©PHILIPPE VAURÈS SANTAMARIA

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