Big Apple、Heart of Normandy、 Drakkar Rougeなど。これらの想像力をくすぐるネーミングは世界有数のバーの最新カクテルのもの。これらの共通の材料になっているのが、カルヴァドスです。祖父が愛した「カルヴァ」がヴィンテージなお酒の流行の波に乗って、若返りを果たしました。この有名なりんごのお酒の舞台裏を見に、ノルマンディーの中心部、ペイ・ドージュへ向かいましょう。
今日、私はカルヴァドス生産の本拠地であるシャトー・ド・ブルイユの広報責任者モーガン・ルビアールさんにお目にかかります。「シャトー・ド・ブルイユでは、世界へ向けてカルヴァドスを生産、商品化しています。」とモーガンさんは語ります。若いカルヴァドス(とはいえ、樽で最低2年熟成)の爽快感とほのかなフルーティーさはフランス北部の人たちにとても親しまれています!ここでは従来のホワイトスピリッツ(アクアビットやウォッカ)のようにロックで飲みます。その一方で、ウイスキーの愛好家である日本人はより長期熟成されたりんごの砂糖煮やスパイス、バニラ香やより複雑な味わいのよりクラシックなカルヴァドスを好みます。
シャトー・ド・ブルイユで定期的に働くフリーのバーマン、ギヨーム・シックス氏は「2010年以降、特に18~21歳の若者の間で広まったカクテルブームは未だ止むことはありません」彼らの間ではより甘く、アルコール度の低いドリンクが支持されています。若者たちは、パーティーの場でも友達同士で気さくに話せるひとときとしてインスタントカクテルをアレンジしました。
カルヴァドスベースで最も人気のあるカクテル: 若いカルヴァドス、エルダーフラワー リキュール、フレッシュミント、カソナード(インド洋レユニオン島産砂糖)、ライム、細かい泡のトニックを合わせたモヒート・ノルマンディー。.
そこに、「年代物のカルヴァ」、「上質なカルヴァ」をタイミングよく加えます!この若いカルバドスは、りんごの香りが際立ち、存在感が強いため、「少量加えるだけで十分です。例えば、モヒート・ノルマンディーに入れるカルバドスは3 clなのに対し、従来のモヒートには市販のラム酒を6 clも入れます」とギヨーム・シックス氏は言います。彼が続けるには 「同じような理由から、より甘くよりアルコール度の低いカルヴァドスとりんごジュースをベースにしたカルヴァドスのリキュールも昨今のミクソロジーでとても支持されています」カルヴァドスを楽しむこうした新しいスタイルに応えるために、バーテンダーは非常にフレッシュで爽快感のあるスパークリングの「デイタイム」カクテルと、例えば仕上げに生クリームを添えたよりリッチでグルメな「デザート」カクテルのバリエーションを誕生させました。
古酒、長期熟成、特別樽仕上げのカルヴァドスをシンプルなこれらのレシピの繊細さを引き出すために加えることもあります。カルヴァドスが多めに入ったこれらのアペリティフカクテルはゆっくりと味わいます。そうでなくても、お値段からしてお勘定はすぐに辛口に!
とにかく何に使うにしてもカルヴァドスは常に上質なものでなければなりません。では、「上質のカルヴァドス」の条件とはなんでしょうか?モーガン・ルビアールさんが重要な生産工程を説明します。
洗浄したりんごとすりおろしたりんご
第1段階:果樹園から荷台に積まれたりんごが到着し、セメントの大型桶に注がれます。カラフルな青、赤、黄色のりんごの山!りんごは、「苦味」、「甘苦味」、「甘味」、「酸味」など味質の異なる複数の品種が用いられます。バランスのとれたシードルをつくるにはこのブレンドが重要です。これを発酵することにより、上質なカルヴァドスのベースとなります。溝に押し出されたりんごは流水で洗浄され、醸造室へ押し流されます。そこで、破砕、すりおろし、充填が行われ…選果ラインや方々に向いたホース…左側では、小さなりんごが粉砕機に落ちていきます。出口では、りんごの果肉が巨大な圧搾機へと絶えず運ばれ、搾汁と呼ばれるシードル用のりんご果汁をリズムよく抽出します。りんごの香りが最高潮に達しています。
粉砕、搾汁を攪拌することで混合物に酸素を供給し、シードルの自然発酵をうながす酵母を活性化させます.
まもなくシードル完成
第2段階:搾汁はパイプを通って大型ステンレススティールタンクでゆっくりとシードルになります。「タンクに入れて最低でも3週間必要です」とモーガン・ルビアールさんは言います
マジックアランビック
醸造室を出て、19世紀の紡績工場跡をカルヴァドス熟成庫に改装した見事な古い建物内で醸造責任者フィリップ・エティナールさんと合流しました。
第3段階 : 蒸留と熟成 庭に面した地上階で砂利の上に大樽やオーク樽が連なって並んでいる部屋に入ります。
毎年条件が異なるので、この仕事で一番おもしろいのが毎回臨機応変に対応しなければならないということです。これでよしということはありません!
ここでは木の複雑な香りとりんごの砂糖煮の香りが混じり合っています。「シードル内の酵素の発酵が様々な香りを放ちます。我々の仕事は蒸留時にそれらを捉えることです」とフィリップ・エティナールさんは説明します。蒸留室に入ります。これは、AOPペイ・ドージュで規定されるアランビック蒸留器です。巨大で迫力のある装置です。アルコール度5 %のシードルを熱して、アルコールを濃縮し、アルコール度70%の液体(原酒)を得るのが目的です。「毎年条件が異なるので、この仕事で一番おもしろいのが毎回臨機応変に対応しなければならないということです。これでよしということはありません!」と眼鏡越しにいたずらそうな目をした男性が付け加えます。
錬金術
オーク樽で熟成させた貴重な液体がカルヴァドスになります。「温度と湿度も熟成状態にかなりの影響を与えます」とフィリップ・エティナールさんは説明します。熟成庫が乾燥すると、より水が蒸発し、アルコールは残るので樽の中で上がりますが、醸造所の湿度が高いとアルコールが蒸発し、アルコール度が低くなります」カルヴァドスの熟成とは、瓶詰めまで望むアルコール度数に達するために、樽から樽へと定期的に液体を移し替えることを意味します。徐々に、カルヴァドス独特の香りが現われ、黄金色から深い琥珀色になります。若いカルヴァドスによくあるフレッシュなりんごの香りは時間とともにより複雑なりんごの砂糖煮の香りやバニラ、はちみつまたはクルミ香や木の香りに進化します。
私が好きなのは、これらの原酒から特定の香りを抽出することです
ここでは、他のアルコール(ウイスキー、ソーテルヌ)の熟成に用いられたオーク樽にカルヴァドスを寝かし、様々な樽の原酒をブレンドさせるという醸造者の創造性が問われます。当然、この作業にはテイスティングによる原酒の継続的な評価が求められます。「ブレンドまたはいいタイミングで移し替えるには、カルヴァドスの特徴を定期的に評価する必要があります」とフィリップ・エティナールさんは説明します。
人それぞれ
分かったこと : 爽快感、深さ、若いりんごの香り、りんごの砂糖煮の香りなど、好みに応じたカルヴァドスが楽しめます。「私はカクテルが特に好きで、お気に入りはカルヴァドスをベースにレモン汁とグレナデン・シロップを合わせた定番の ジャック・ローズです」と「ラボ」へ向かう道中、醸造責任者が打ち明けます。
試飲コーナーに戻り、モーガン・ルビアールさんからカルヴァドス・トニックをいただきました!トニックベースに若いカルヴァドスと氷を入れたカクテルは飲むごとに口の中で弾けます。
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