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こうした言葉が用語集に加わっているのは、ワイン生産者がどんどん使いだしたからに他なりません。そしてそれは、ワイン生産者たちの意識の変化の表れでもあります。つまり、ぶどうも他の単一栽培作物と同様、栽培環境の全体的なバランスが崩れたり、特定の種が消滅したり、病気が急速に蔓延したりするなどの問題を抱えています。そこで、区画の周りに生け垣を作ったり、木を植えたりする生産者が、どの地域にも増えてきています。好ましい生物多様性を促進し、ぶどうの木に有益な環境を作ることが生産者たちの願いです。生物多様性保全によるメリットはたくさんあります。複数の植物からなる植生は、侵食を抑制するうえで非常に有効です。傾斜地では、大雨の後に土が区画の下まで滑り落ちて、ぶどうの木を倒してしまうことがあります。生垣や樹木を適材適所に配置していれば、そうはなりません。また、植生はミクロクリマ(微気候)においても重要な役割を果たしています。植物が日陰を作ってくれるので、ぶどうの木が日に焼けずに済みます。また、ピレネー山脈を越えて強風が吹きつけるルシヨンのように、強風が吹く地域では、風の勢いと被害を抑えてくれます。様々な樹種が生み出すバイオマスは、土壌構造にも良い影響を与えます。そうしたバイオマスなしでは、ぶどうの害虫の捕食者を含む、豊かな動物相も発生しないのです。コウモリが良い例です。コウモリは、ぶどうの実に付いた幼虫が蛾になるとそれを食べます。コウモリには特殊な音波探知能力があり、少し丈の高い植物などの障害物を必要とします。障害物からの音波の反射を利用して進路を定め、ぶどうにとって有害な蛾を捕らえてくれるのです!
有機農業が「ファッショナブル」「トレンド」と言われることがありますが、それは有機農業が提示する深い問題提起を誤解しています。アグロフォレストリーや生物多様性についても同様です。前者の実践と後者の促進には、それぞれのテロワールにうまく適合させる必要があり、真剣で厳格な取り組みが必要です。区画の周りに植えるのか、区画の中に植えるのか、バラバラに植えるのか、並木にするのか、特定の種類を植えるのかなど、悩みは尽きません。その場限りの対応では目的を達成できないでしょう。有機農業のアプローチには、非常に長期的な視野が必要なのです!
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