20世紀にフランスを訪れたことのある方なら、「キール」や「キールロワイヤル」という単語がフランス各地の店でアペロのメニューに載っているのを目にしたことがあるでしょう。このミステリアスなアペリティフは一体どのようなお酒なのでしょうか?白ワインとフルーツ風味のリキュールでつくる、このシンプルなのに満足感のあるカクテルは、フランス文化や歴史において重要な役割を果たしています。興味が湧きましたか?それでは、詳しく説明しましょう。  

What Is Kir?

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キールってどんなお酒? 

キールは、白ワインとカシスのリキュール(クレーム・ド・カシス)でつくるフランスのポピュラーなカクテルです

 

キールはどこで生まれましたか?

キールの発祥地はフランスのブルゴーニュ地方です。

 

どうやってつくりますか?

ほとんどのキールカクテルは、白ワインとクレーム・ド・カシスを9対1の割合で合わせます。つまり、白ワイン90mLに対してカシスリキュールは10mLです。ただし、白ワインなら何でもよいというわけではありません。キールカクテルに入れるのは、アリゴテというブルゴーニュの白ワインです。 
アリゴテが手に入らない場合は、酸味が強くすっきりしたブルゴーニュの白ワイン(シャブリなど)がおすすめです。甘いカクテルがお好みなら、リキュールを少し多めに加えましょう。ただし、ゆっくりと慎重に加えてください。  

 

キールはどのようにサーブしますか?

シャンパーニュグラス(または白ワイングラス)の底にクレーム・ド・カシスを入れ、白ワインを注ぎます。実に簡単ですね! 

 

キールにはどのような歴史や文化的背景がありますか?

かつて「ブラン・カシス」と呼ばれていたキールは、ディジョン市長であったフェリックス・キール氏にちなんで名付けられました。このカクテルは、第二次世界大戦中の国際会議や会合で来賓にふるまわれることが多く、高い人気を博しました。キール市長は来賓に飲み物を提供して歓待するだけでなく、地元の特産品である辛口の白ワインとクレーム・ド・カシスを宣伝したのです。  

 

ブルゴーニュの赤ワインはドイツ軍にほとんど没収されたため、キールは戦時中、そして戦後にも人気を博しました。キールはもともと赤ワインでつくられていたそうですが、地元には白ワインが余っていたため、これを使って風味豊かな美味しいカクテルが生まれたのです。

 

定番のキールをアレンジしたカクテルでは、どのようなものが有名ですか?

特に人気があるのは「キールロワイヤル」、白ワインの代わりにシャンパーニュを使ったカクテルです。本来はカシスリキュールを使用しますが、最近ではラズベリーリキュール(シャンボール)やピーチなどのフレーバーシロップを使うことも少なくありません。  
白ワインの代わりにシードルを使用した「キール・ブルトン」も人気があります。カルヴァドスを少々加えれば「シードル・ロワイヤル」ができあがります。 

 

キールはいつ、どのように楽しむのが一番ですか?

通常、キールは食事の前にアペリティフとして楽しみます。キールに合う軽食としては、キッシュやグジェールといった地元ブルゴーニュの郷土料理があります。

 

キールに最適な材料を選ぶ

完璧なキールをつくるには、正しい材料選びから始めましょう。クレーム・ド・カシスはどれも同じではありません。甘いものもあれば、ベリーの風味が強いものもあります。コクのある深い味わいを楽しみたいなら、新鮮な完熟カシスからつくられた上質なクレーム・ド・カシスを選びましょう。ワインは、カシスリキュールの甘さとバランスを取るために、すっきりした酸味とほのかなフルーツの香りが特徴のアリゴテを選ぶのが昔ながらのチョイスです。

 

フランス文化におけるキール

キールは今でもフランス人に愛されるアペリティフであり、家庭やカフェで楽しまれています。発祥の地であるブルゴーニュでは、歓迎の意と地元の誇りを象徴するカクテルとして、結婚式やお祭り、家族の集まりで供されます。パリのビストロでもキールがメニューにあり、ディナー前にくつろぎながら交流を深める「アペロ」のひとときに注文されます。フランスだけでなく、世界各国にもキールのファンは多く、食事の始まりや楽しい仲間との乾杯にぴったりです。

 

キールをめぐる豆知識

ディジョンの市長であったフェリックス・キール氏にちなんで名付けられる前は「ブラン・カシス」と呼ばれていたことをご存じでしたか?アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『泥棒成金』の撮影中にキールを初めて飲んだケイリー・グラントがキールを気に入り、ハリウッドスターの間に広まるきっかけになったというエピソードも興味をそそります。現在では、ノルマンディー産のシードルを使った「キール・ノルマンディー」や、サヴォワ産の白ワインを使った「キール・サヴォワ」など、フランス各地にバリエーション豊かなキールがあります。

 

キールの栄養に関する情報

キールは美味しいアペリティフですが、栄養面についても知っておくとよいでしょう。一般的なキールは150~200カロリーほどで、そのほとんどがクレーム・ド・カシスに由来しています。糖分の摂取量が気になる方は、リキュールを少なめにするか、低糖のキールを選びましょう。カシスにたっぷり含まれている抗酸化物質やビタミンC、アントシアニンには免疫系や心臓の健康をサポートする働きがあります。とはいえ、どんなドリンクでも飲みすぎは禁物。ほどよく楽しむことが大切です。

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