上昇する気温、どんどん早まる収穫期、熟し過ぎるブドウ…データやエビデンスを見れば温暖化が事実として起きていることは明らかで、フランスのワイン生産地域でもその影響を受けています。そして気候変動の影響はフランス南部の生産地だけでなく、今ではシャンパーニュ地方をはじめとするフランス最北端のブドウ畑にも及んでいるのです。
温暖化対策の開始
ランスやエペルネーのワイン生産者は最近まで、温かい年が増えるとブドウが成熟しやすいということで、温暖化を前向きにとらえていました。しかし、今や温暖化が減速する気配はまったくみられず、平均気温は上昇し続けています。そのため、シャンパーニュのワイン業界では、シャンパンの酸味や生き生きした特質が失われてしまうというのではという懸念が高まっています。すぐに対策を始めなければいけない段階に入っていて、地元の業界団体「Comité Champagne(コミテ・シャンパーニュ)」は、2つの側面から対応を始めています。1つ目は、例えば、カーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)削減への取り組みなどを通じ、地球温暖化に加担しないようにすること。そして2つ目は、栽培慣行を「修正」して新しい気候条件に適応させることです。
ブドウの木の改善
その他にも、現在様々な解決策が検討中またはすでに実施されています。主な対策のひとつは、古いブドウ品種の復活や特に温暖な環境に適した新品種の創出に関する植物の研究です。もうひとつの焦点は、ブドウの木の改良です。農薬や化学肥料をなるべく使わないなどよりクリーンなアプローチは、環境問題にとどまらず、多くの利点があることが明らかになっています。過剰な化学的除草を行うと、土壌は不活性化し硬く固まり、その結果地表からわずか数センチのところで根が水平に生えるようになってしまいます。植生を完全に奪われた土壌は天気の影響を直接受けることになるのです。
このような手段を用いなければ、土壌は蘇り、木の根は再び地中に向かって成長するようになります。地中の奥深くで、シャンパーニュの個性を形作るテロワールの特徴的な要素とともに、水ストレスやその他の極端な気候から守られる場所を見つけます。
さらに、シャンパーニュのワイン生産者は枝葉の管理や植栽密度などの栽培方法も研究しています。1ヘクタールあたりのブドウの木の本数が比較的少なく木の間隔が広めの「中規模の」ブドウ園で実験が行われ、乾燥期の水不足に対する保護の強化が図られています。
セラーでの調整
気候変動の影響に対抗してシャンパーニュのバランスを維持する、ただひとつの奇跡的な解決策というものは存在しません。ブドウの木からセラーに至るまで、様々な処置が必要なのです。ブドウの実が新鮮な、早い時期にブドウを収穫するのもそのひとつです。その他、果実に十分な天然の糖分が含まれている場合はシャプタリゼーション(補糖)をしない、すなわち樽に砂糖を加えて発酵させない。あるいは、ワインの味をまろやかにするマロラクティック発酵をアルコール発酵後に行わない、といったものがあります。以上は業界団体が提案した処置のほんの一部です。ブドウ園を気候変動の過程と穏やかに調和させること、そしてこの地域の発泡ワインのシャンパーニュとしてのアイデンティティを保護することが最終的な目標です。
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エディター