午前7時15分: 目覚まし時計が鳴った。 まず、子どもたちを起こして。 子ども部屋をひっくり返して、子どもたちが着たい服を探して、2種類のジャムを塗ったトーストをチョコレートクリームのボウルに突っ込まないよう見張りながら、どこにあるのやら分からない歯ブラシを探して…。しかし、いくら探しても、おもちゃの工具しか出てこない!子どもを学校に送りながら、宿題に保護者のサインをして、学校で降ろして、やっと一息…
午前8時45分: 在宅勤務の開始時間に間に合うよう、急いで帰宅。 ラジオをつけて、やっと今日がバレンタインデーだと気付く! 大丈夫だ、慌てるな。 ディナーまで、まだ時間はある。 ただし、落ち着いて行動しないと。 パートナーも在宅勤務なのだから。 とりあえずは静かで誰にもじゃまされないバスルームに避難しよう。 何とかならないか。 と考えていると、ピロピロとカレンダーのリマインダーが鳴った。 ZOOM会議の始まりだ。 「こんにちは。 おつかれさまです。 それではミーティングを始めましょうか。 でも一体、どこにいるんですか…?」と初っ端から突っ込まれる。
午後12時30分: すべての会議を完了。 やっと昼食がとれる。 妻に「そろそろランチの時間だね?」と言うと、…長い沈黙…。仕方がないので「よし、準備は僕に任せて!」と声をかけ、 食材の調達のために、ちょっと家を出る。 すると、あるものが目に入る。 花屋があるじゃないか! これはいいかもしれない。 少し並ばなければならないだろうが、まあいい。 「こんにちは。お客様のご注文番号を頂けますか?…え、お持ちではない?恐れ入りますが、外出自粛期間のため、オンライン注文のお受け取り以外は対応しておりません。」 結局、ランチも花束も調達できずに家路に着く。 何とかならないか。このパン屋で起死回生だ! 「ただいま。君のためにパリジャンサンドを買ってきたよ。たっぷり入ったハムがバラの花びらみたいだね。」
-妻の沈黙が痛い…
午後2時: 再び、在宅勤務の時間だ。 業務連絡に次ぐ業務連絡。 事務処理も難なくこなしてと。 しかし、何のためにこんなことをやっているんだ? いいアイデアを思いついた。感染症以降は、高級レストランもデリバリーをやっているというじゃないか。 よし、仕事はやめだ! またトイレにこもって、ネット検索を始める。 色々な店のサイトをチェックして…と。 しかし、重大な事実に気付いてしまった。料理は前もって注文しておかなければならなかったのだ! 「なんてこった!!」
-あなた大丈夫?
「…ああ、何でもないよ」プレッシャーが高まってくる。 冷や汗が出てきた。 かくなる上は、 一発勝負で、手作りディナーに挑戦するしかないのだろうか。
午後4時: パソコンを消して、 Zoomのカメラもやっとオフになった。 これから、めくるめくバレンタインデー・ディナーのレシピをネットで探すのだ。 「あらかじめ前の日に…を準備しておく」-もう遅い。 「耐熱陶器のスキレットに…」
-何だそれは? 「乳化して置いておく」、「シノワでこして…」、「卵の黄身15グラム…」
-意味がまったく分からない! そうしてブツブツ文句を言っていると… 妻が「あなた、バスルームで何をやっているの? 本当に大丈夫?」
-だから、大丈夫だと言ったじゃないか!
午後5時45分: ついに両親にもSOSを発信。 「シャンパンでも用意すればいいのよ!」 よし! 素早く家を出る。 今度はバカにされないよう、あらかじめお店に電話をするのだ。 「そちらはオンライン注文受け取り以外もやってますよね?」
「はい、 しかし、自粛の影響であと10分で閉店なんです。」 足を速めて、 走って…何とか閉店前に滑り込んだ。 「お客さん、ラッキーですね。これが最後の一本です!」 深呼吸をする(もちろん、マスクを着けたまま)。 息で曇ったメガネを外したら、店の備品につまずいてしまった。 ボトルを落としてしまい、シャンパンが床にこぼれてしまった…。
午後6時10分: 打ちのめされた気持ちで帰宅。 マンションの下のドアを開けると、 大荷物を持った配達員の人とぶつかった。 一緒にエレベーターに乗っていると、 行き先は我が家じゃないか… 妻がドアを開ける。 「あら、おかえりなさい。 …配達ご苦労さまです。ありがとうございました!」
-何を注文したんだ?ずいぶん忙しそうだったのに。「美味しそうな食材を頼んだのよ。バレンティンデーの素敵なディナー*をあなたと一緒に作りたくて!」 妻からのキス…(これは素敵な沈黙だ)。
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エディター