剪定ばさみか剪定機か。手摘みか収穫機か。馬かトラクターか。あるワイン生産者は、トラクターの座席からよりも、馬の後ろで地に足を付け、犂(からすき)を引くときの方が、土壌のことがよく分かると言います。こうした哲学に駆り立てられた生産者たちは、区画のほぼすべてのぶどうの木に強い絆と親しみを抱きつつワイン生産に従事しています。直接触れ合っていないとこうした絆は生まれません。
冬につるを剪定するときを例に取ってみましょう。ひとつひとつの株には個性があり、株の形状、樹勢、ぶどうの実のつきやすさなどに応じて剪定を行う必要があります。機械にこのスキルはありません。収穫も同じです。機械の重さで土壌が圧縮されぶどうの木が不安定になること、人間の目と手に勝るものはないということなど、さまざまな理由から収穫を機械に任せるわけにいきません。セラーでもその精神は変わらず、テクノロジーの介入は最小限に抑えられ、任せられるのはタンク内の温度管理くらいです。こうした生産者は、ぶどう栽培やワイン醸造のための最新機器をあれこれと紹介する専門カタログの熱心な読者でありません。
こうした流れがある一方で、作業の快適さや速度を追求し、「ハイテク革命」に積極的に参加する向きもあります。剪定機、ぶどうの木の間の草取りをするGPS付きロボット、病気の発生を防ぐためにぶどうの木を監視するドローン…他にも、ぶどうの木の間を自動で歩き回り、窒素や湿度などさまざまな情報を収集するロボット、光学式選別機やぶどうの成熟度を測定する装置を備えた収穫機、連結式プレスなど、専門展示会で毎年発表されるイノベーションは数十種類にのぼります。
私は、ハイテクを駆使したぶどう栽培の利点を否定するつもりはありませんが、土地、ぶどう樹、そしてぶどうの実に寄り添うワイン生産者という伝統的で詩的なイメージとはかけ離れていることだけは指摘させてください。だからといって、最先端のアプローチで造られたワインの品質が劣ると言ってしまうのは、あまりに早計でしょう。
皆さんは、どう考えますか?
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