フランスにはアグリテックおよびフードテック分野のスタートアップが215社あり、その資金調達額はEU加盟国でトップ、世界でも5位となっています。
フランスは、アグリ・フードテック分野で世界をリードしており、スタートアップ215社*やその他企業の動きが活発です。EUでは、資金調達額でトップ、世界全体でも5位にランクインしています。この目覚ましい成功の背景にあるのは、フランスの豊かな農業知識と食文化遺産であり、政府もこのセクターを強く後押ししています。
活況を呈するフランスのアグリ・フードテックシーン:資金調達が1年で3.42倍に急増
フランスのアグリ・フードテック分野の活況を裏付けるのが、その資金調達です。2022年の調達額は6億6,800万ユーロに達し、前年の3.42倍に増加しました。*同じ年、アグリ・フードテック以外の分野のフランスのスタートアップの調達額は同68%減と低調だったことを考慮すると、特筆すべき急増といえます。
ほとんどスタートアップ企業は、インキュベーターやアクセラレーターのバックアップを受けています。こうした団体・組織の主な目的は、独創的なコンセプトを事業として成功させることです。そのために、起業家に対して仕事場や初期の資金援助、メンタリングを提供します。そして、精密農業から、革新的で倫理的、健康に良い食品の開発まで、画期的技術を数多く開拓できる環境を作り出しています。
食のイノベーションを推進するフランスのフードインキュベーター
フランスの主要インキュベーターの1つ、Smart Food Parisは、カルフールやダノン、エリオール・グループの支援を受け、パリ市経済開発公社「Paris&Co」が立ち上げたフードテック専門のインキュベーターです。Smart Food Parisは、スタートアップ、大企業、研究機関、専門家、そして地方自治体を結びつけ、持続可能な食に関わるイノベーションを共同で推進するためのプラットフォームとなっています。 また、フランス政府のスタートアップ振興政策フレンチテック(FrenchTech)において、国内8つのインキュベーター・エコシステムからなるFoodTechネットワークも立ち上げられました。このネットワークは、国内のスタートアップと幅広いステークホルダーを結びつけ、食品業界における協調的ソリューションを生み出すためのハブとして機能しています。その他、リヨンのFoodshakerやFood Factory、そしてブルターニュ、ノルマンディー、ペイ・ド・ラ・ロワール地方で展開するValorialなどのインキュベーターも注目されています。
フランスのインキュベーターから飛び立ったスタートアップの成功例としては、フランスのフードロス取り組みの最前線で活躍する「Phenix」、消費者に売れ残り食品を割引価格で提供する「Too Good To Go」、食材とレシピを自宅に届ける宅配ミールキット「Quitoque」などがあります。
Hectarで農業に革新を起こす
アグリテック分野で、特筆すべきインキュベーターは「Hectar」です。これは世界最大級のスタートアップ施設「Station F」や格安携帯フリーで知られる億万長者の実業家グザビエ・ニエル氏とエマニュエル・マクロン大統領の元農業顧問オードリー・ブルローが支援する組織です。パリ郊外の600ヘクタールの敷地の中で、農業、起業、テクノロジーを融合した独自のエコシステムを構築しています。Hectarは、農業起業家向け支援プログラムや、スタートアップ・アクセラレーター、再生農業のパイロット農場を提供しています。
フランスが誇る豊かな農業遺産と食の伝統は、国内のアグリ・フードテックのイノベーションの促進においても有益な役割を果たしてきました。2050年には世界人口は96億人に達すると予測されています。このような将来的課題に対処するうえで、農業と食が優先事項であることは明らかです。**
*フランス政府(2022年2月25日)
*国連報道センター