世界の食をめぐる旅:各国の人気料理とフランスワインのペアリング

By Vicki Denig

料理の楽しみが広がるペアリング。世界各国の人気料理に合うワインを一挙にご紹介。メキシコのタコスから日本の寿司、イタリアのパスタからベトナムのフォーまで、世界中の料理を引き立てるフランスワインの選び方を解説します。 

Charles Monnier

フランスには、世界でも類を見ないほど多彩なワイン産地があり、各地で生産されるワインは、フランス料理という垣根を超え、さまざまな国の料理とのペアリングを楽しめます。「同じ土地で育ったものは相性が良い」という定説を守っておけば無難ですが、フランスワインに世界各国の料理を合わせることにより、美味しさが無限に広がります。ここでは、まず押さえるべき組み合わせとして、世界各地の料理と相性の良い、おすすめのペアリングを何種類かまとめました。あとは、Uber EatsやSeamlessなどの宅配アプリを開いて、以下のおすすめワインから1本選び、グラスを準備するだけです。  

 

注:多様で独自性に富んだ各国・地域の食文化をひとくくりにして考えることはできません。この記事では、世界各地の代表料理に共通する風味や食材をまとめ、できるだけ多くのメニューに合う、汎用性の高いフランスワインを探しました。  

 

フランスワインとメキシコ料理のペアリング 

 

メキシコ料理は、魚介のタコスやワカモレ、新鮮なシーフードのように柑橘が香る爽やかな料理から、スパイシーなサルサ、甘く香ばしい肉料理、モレソースまで、バラエティ豊かな味わいが魅力です。多彩な味わいのメキシコ料理には、合わせられるフランスワインも多様であり、そのペアリングは至福の食体験をもたらします。コリアンダーや爽やかな柑橘類を効かせた料理には、ロワール渓谷の白ワイン(ソーヴィニヨン・ブランやシュナン・ブラン)、あるいはソーヴィニヨン・ブランとセミヨンをブレンドしたボルドーの白がおすすめ。スモーキーな香りの肉料理やモレには、ブルゴーニュのアーシーなピノ・ノワール、ローヌ渓谷のシラー主体の赤ワインがぴったりです。  

 

フランスワインとインド料理のペアリング 

 

インドは国土が広く、土壌や気候、文化や伝統、ハーブやスパイスが地域によって異なるため、多様性に富んだ食文化があります。その一方、米や小麦全粒粉、赤レンズ豆、ひよこ豆といった主食、カルダモンやブラックマスタードシード、ショウガ、ニンニク、クミン、ターメリックなどの香辛料は、インド全土で広く使われています。(注:インドの代表的な食材として、ブラックカルダモン、シナモン、クローブ、クミン、ブラックペッパー、コリアンダーシード、アニスの7種の香辛料を配合した、ガラムマサラというパウダー状のミックススパイスがあります。)  

 

スパイシーな料理には、やや辛口のアルザス産ゲヴュルツトラミネールやピノ・グリがおすすめ。あまりスパイシーでない料理には、鮮やかで果実味が豊かなボジョレーのガメイが合うでしょう。しっかり冷やしておくと格別です。万人受けするペアリングなら、果実味が豊かなプロヴァンスやラングドックのロゼを選びましょう。シャンパーニュ産のスパークリングロゼなら、ワンランク上のペアリングが楽しめます。 プロのアドバイス:手頃な価格のスパークリングロゼなら、ロワール渓谷やアルザス、東部のブルゴーニュとジュラなど、シャンパーニュ以外の産地で探してみてください。  

フランスワインと東南アジア料理のペアリング 

 

東南アジアは、世界で最も文化的に多様な地域の一つであり、その料理も実に多彩です。東南アジア各国の料理はそれぞれ異なりますが、代表料理の風味にはいくつかの共通点があります。例えば、南アジアの料理では唐辛子や胡椒、クミンなどのスパイスを多用するのに対して、東南アジアでは一般的にライム、コリアンダー、レモングラス、タマリンドなどの柑橘類やハーブをよく使います。  

 

全体的に口当たりが軽めで、香りや風味の豊かな東南アジア料理と相性が良いのは、酸味の強いシトラス系の白ワインです。ちょっぴりスパイシーなベトナム風サンドイッチ(バインミー)には、舌を包み込むような、やや辛口のアルザス産リースリングがぴったりです。辛くなく、ハーブ香るパッタイがお好みなら、同様にハーブのような香りで、酸味が豊かなロワール渓谷のソーヴィニヨン・ブランが、この料理の独特な風味を最大限に引き出してくれます。  

フランスワインとイタリア料理のペアリング

 

イタリア料理は非常に多彩で、フランス料理と同じく、地域ごとに特色があります。北部ではボリュームのある肉料理が主流ですが、南部では柑橘系の爽やかな食材や、肉よりも魚介がメインの料理が一般的です。ここでは、分かりやすいようにイタリアの定番中の定番、テイクアウトでも人気のピザとパスタに合うワインを紹介します。

深い味わいのトマトソースを使ったピザやパスタには、同じく風味豊かで酸味の強い赤ワイン、例えばローヌ渓谷のグルナッシュを主体にしたブレンドやボジョレーの果実味豊かなガメイがおすすめ。こうしたワインの爽やかな酸味、そして土っぽさと果実味の絶妙なバランスは、共通した風味を持つトマトベースのソースの味を引き立ててくれます。トマトソース系以外のパスタ(フレッシュバジルを使ったジェノヴェーゼやカチョ・エ・ペペ、レモンパスタなど)やホワイトソースのピザには、まろやかでバランスの取れたブルゴーニュの白ワイン(シャルドネやアリゴテ)、あるいはアルプス山麓にあるサヴォワの白ワイン(ジャケールやアルテス)がおすすめです。

 

フランスワインと中国料理のペアリング

 

中国料理は、世界で最も人気のあるアジア料理の一つです。その多彩な味わい、食感、食材から、あらゆるグルメファンを魅了しています。米や麺類、醤油をベースとし、さまざまなお茶、油、豆腐などの食材が使われます。中国も国土が広いため、地域や生産される食材によって多様な料理があります。ここでは、代表的な中国食材(麺や唐辛子など)を使った世界で人気の料理として、北京ダックや鶏肉のナッツ炒め、炒麺(チャオメン)などを取り上げます。

 

北京ダックとのペアリングで、ワイン専門家がおすすめするのは、果実味が豊かでタンニンが柔らかいライトボディ~ミディアムボディの赤ワイン、例えば、ボジョレーに10カ所あるクリュのガメイや、フルボディに近いタヴェルのロゼワインです。鶏肉のナッツ炒めのような辛い料理には、やや辛口なアルザスのピノ・グリやゲヴュルツトラミネールがぴったりです。炒麺に合うのは、やや辛口の白ワインや、各種スパークリングワイン(シャンパーニュ、アルザス、ロワール渓谷など)です。 

 

フランスワインと地中海料理のペアリング

 

地中海料理は他の国・地域の料理と違って、さまざまな国や文化圏にまたがっていますが、地中海に面しているという地理的条件、そして食材や調理法に共通点があります。外国人が地中海料理と聞いてイメージするのは、新鮮なサラダ、栄養たっぷりのディップ(フムス、ババガヌーシュ)、ファラフェル、オリーブ、さまざまな鮮魚を使った料理です。

 

こうした料理に合うのは、白やロゼ、オレンジワイン、あるいはライトボディの赤です。酸味が強く、(オレンジワインや赤の場合は)タンニンが柔らかく軽いものがよいでしょう。白ワインなら、酸味が強く、塩味の感じられるミュスカデや、同じような味わい構成であるプロヴァンスやラングドックのロゼが特におすすめです。ボジョレーの鮮やかな赤ワインや、アルプス山麓にあるサヴォワの軽やかなモンドゥーズ、あるいは南のローヌ、ラングドック、プロヴァンスのサンソーやグルナッシュを主体にした赤ワインも魅力的な選択肢です。

 

フランスワインと和食のペアリング

 

和食は世界で最も高く評価されている料理の一つで、これは誰もが納得でしょう。シンプルさと匠の技を追求し、地元で採れた旬の食材にこだわる姿勢によって、和食は世界最高峰の食文化となっています。和食と一口に言っても、地域ごとにさまざまな料理があります。ここでは海外でも人気の味噌汁や寿司、刺身、天ぷら、ラーメン(中国発祥だが、日本の食文化に深く浸透している)などのメインディッシュに合うフランスワインを紹介します。

 

和食は、「うま味」という概念で知られています。味噌汁、だしのきいた料理、各種寿司や刺身には、ロワール渓谷のシュナン・ブランがよく合います。このワインの豊かな果実味と爽やかな酸味は、料理の味わいを引き立て、うま味を際立たせます。ラーメンとのペアリングは、種類や具材によってさまざまですが、酸味の強い白ワイン(ロワール渓谷のミュスカデやシャブリ)やタンニンの少ない軽めの赤ワイン(ボジョレーのガメイ、ブルゴーニュやロワール渓谷のピノ・ノワール)が全体的に無難なチョイスです。最後に、天ぷら全般(魚介類も含め)にはスパークリングワインがぴったりです。シャンパーニュはどんな天ぷらにも合いますが、アルザスやジュラ、ロワール渓谷のリーズナブルな泡も相性抜群です。

 

厳選したワインと料理の組み合わせ、各地の名物を紹介した地域色豊かなペアリングについても今後解説していきます。どうぞお楽しみに!

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