シェフが庭から厨房へ
フランスをはじめ世界中で、自身が育てた果物やハーブ、野菜などをレストランで提供するシェフが増えています。いまだかつて「土からテーブルへ」という表現が、これほど的を得ていたことはありません!
5月のこの日、私たちのテーブルには、ほんの数時間前に収穫された早摘みの野菜が、地元産でパリッとした皮の鶏肉と一緒に並んでいます。オーヴェルニュ地方の中心に位置する楽園レストラン、オーベルジュ・ド・シャシニョールでは、春のうららかな晴れの日に生まれた最初の青菜が、道の反対側にある小さな菜園から届けられることもあります。
オーナーであるピーター・テイラーの指揮のもと、常駐するシェフが手入れをする数区画の土地。このような例は珍しくありません。このオーヴェルニュのレストランと同じように、意義と土地への回帰を求め、菜園の世話をするシェフたちがいます。
このムーブメントのリーダーは、パリのレストラン「ラルページュ」の三ツ星シェフ、アラン・パサールです。2002年から野菜作りを始め、今では自給自足を達成しています。2019年には各4ヘクタール近い2区画を所有し、10人ほどの庭師を雇っていました。
それ以前には、1990年代に著名なシェフであるジャン・バルデが、年に一度、トゥールにある自身の菜園に一部の選ばれし幸運な人たちを招待していました。この手法は、メディアで有名なダン・バーバーがニューヨーク北部で取り入れています。ブルーヒル・アット・ストーン・バーンズのミシュラン二ツ星シェフのゲストは、食事の前に隣接する農場を散策するよう案内され、その後の食事が忘れられない体験になります。フランス中部のラギオールにあるミシェルとセバスチャン・ブラの楽園でも、忘れられた品種のジャガイモを復活させているベレゾウツキー兄弟のいるロシアでも、同じ感動を味わうことができます。
『シェフの庭:種からテーブルまでのお話とレシピ(Jardins de chefs : histoires et recettes de la graine à l’assiette)』には、これらのシェフをはじめ、さまざまなシェフが登場します。2019年にフェドン社から出版された本書は、読者を世界各地の約40のレストランとその菜園に案内してくれます。この本は、このベーシックなトレンドのもうひとつの証です。
というのも、こうした菜園には、多くの良い点があります。毎日の収穫や顧客に提供される体験だけでなく、料理人の指導もできますから。「菜園を維持することは、季節とつながり、自然と調和することでもあります。自分の菜園があると、そこで収穫されるものだけを調理するようになります。冬や春先などは収穫物が限られますが、それが創作の源にもなります」とシェフのフレッド・メナジェは言います。ブルゴーニュのオーベルジュ・ド・ラ・リュショットで、サラダバーネット、トマト、花畑、サツマイモなどの逸品が育つ庭の手入れをするのは、このシェフのチームです。収穫物がキッチンに届くと、丁寧に扱われ、無駄にすることがないそうです。「オーブンと畑のつながりは神聖なものです。このつながりがなければ、お客さまをテーブルにお招きする意味がありません」と、この農夫兼料理人は言い切ります。理想的すぎて信じられませんか?それなら、答えは簡単です!自身の菜園を持つフランス人シェフを訪ね、その菜園を散策してから食事をしてみてください。
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