「ミクソロジー」って、今までに聞いたことはありますか?
簡単に言えばカクテルだけれど、もしかしたらあなたのイメージしているカクテルではないかもしれません。
日本を代表するミクソロジストの南雲 主于三(なぐも しゅうぞう)さんに、ミクソロジーのおいしいエッセンスをちょっとだけ伝えてもらいましょう。
フレッシュなフレーバーが魅力
ミクソロジーは、数種のアルコールを混ぜるだけにとどまらないカクテル。
ハーブ、スパイス、フルーツ、茶、野菜など多種類の素材を使い、フレッシュ感をグラスのなかで膨らませてみせる飲み物なのです。
しかも、「遠心分離機で素材のエキスを抽出する」「既成の酒にハーブを漬け込む」「熟成させる」といったあらゆる技を大胆に取り入れるのも大きな特徴。
じつは世界中でミクソロジーに注目が集まっていますが、とくに大都市では専門店が次々とオープンする人気ぶりなんですよ。
それほど自由でモダンなミクソロジー界において、第一人者として活躍してきたのが南雲 主于三さん。
日本由来の酒や食材をも巧みに取り込んだオリジナルレシピは国内外問わず大好評、フランスをはじめ海外に招かれデモンストレーションを行う機会が多々あるのも納得です。
南雲さんから「もちろん、フランスと日本の材料を合わせたレシピもありますよ」とワクワクする話題が飛び出てきたところで、特製レシピをそっと教えてもらうことになりました。
フランスの酒3種 × 日本酒
<材料>
マール(フランスの蒸留酒)5ml
アプリコット・リキュール 2.5ml
甘口の酒精強化ワイン(ラタフィアなど)5ml
日本酒 50ml
<レシピ>
1 空のグラスに材料それぞれを計って入れ、混ぜておく。
2 氷を入れたミキシング用グラス(大きめのグラス)に1を注ぎ、ロングスプーンで混ぜる。
3 カクテルグラスに注ぐ。
ワイン感覚で楽しめるカクテル
材料はなんと、フランスの酒3種と日本酒。
斬新な組み合わせにビックリですが、口にしてみると違和感はまったくありません。
「違和感がないのは、レシピを創作するにあたり、カクテルの理論から大きく外れていないからでしょうね。また、日本酒はとてもやさしいお酒。ほかのアルコールを吸収して同化していくイメージです。とくに今回はアルコール14度と少し低めで、生酛造りという古い方法を取り入れた酒を使いましたので旨味が多く酸味もあるので、ワインに近いニュアンスもあります。ワイングラスで飲むと酸味もきちんと感じられ、疲れずに飲めるタイプです」(南雲さん)。
風味のアクセントになるのがフランスの蒸留酒、マール。
ワイン用に絞り終わったブドウの残りを再利用したブランデーの一種で、アルコールは40度ほどになります。
木樽に入れて長期間熟成したマールは、木樽由来の香りがしっかりとついているので、少量でもインパクトがあるのです。
さらにアプリコット・リキュールが持つ華やかなフルーツ香が加わり、ブドウ果汁にマールを添加したリキュールワインラタフィアの甘味も重なって、するすると喉を通ります。
日本酒を使いつつも、ワイン好きにはたまらない、このカクテル。
ミクソロジーの魅力を知る第一歩にはピッタリなレシピでした。
プロフィール 南雲主于三(なぐも しゅうぞう)さん バーテンダーとして活躍しつつ独自にミクソロジーを追求。日本の焼酎や海外のスピリッツ・メーカーによる商品開発にも参画。日本の酒に注力したバー「FOLKLORE」、カカオをテーマとしたバー「mement mori」など、ユニークな店舗を次々と手掛けている。
Contributor
ミクソロジスト