フランス産チーズの”Savoir-Faire”:5種のチーズを詳しく知ろう。

By 池水 みと

フランス産チーズの“Savoir-Faire”と題して、東京、Le Comptoir L‘Atelier渋谷店 にてCNIEL(フランス全国酪農経済センター、本拠地パリ)主催のプレゼンテーション&テイスティングが開催されました。本場フランスの雰囲気が感じられるバーカウンターを囲み、参加者はまずチーズの基本を学び、続いてフランスから届いたチーズとワインのペアリングを楽しみながら、フランス産チーズの魅力を存分に堪能しました!チーズ初心者の方にもぜひ知っていただきたい情報満載のイベントのダイジェストを前編・後編の2回に分けてレポートします。

5 Cheese tastings

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SDGsを軸に取り組むフランスの酪農業界

イベントは、フランス国内の酪農家6万人、および350以上の酪農企業・乳業メーカーが加盟する非営利民間団体CNIEL(フランス全国酪農経済センター)の戦略・国際担当最高業務責任者ローラン・ダミアン氏の挨拶から始まりました。国連・国連食糧農業機関(FAO)が2030年を目標に推進しているSDGsの活動が様々な分野で進む中、2020年以降CNIELでは、「FRANCE, TERRE DE LAIT フランス・テール・ド・レ、日本語で「フランス、ミルクの国」という意味)」という乳業の持続可能性を追求する環境対策、アニマルウエルフェアの改善、安全性の確保などを織り込んだ施策に取り組んでいます。

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CNIEL(フランス全国酪農経済センター)の戦略・国際担当最高業務責任者ローラン・ダミアン氏

フランス産チーズは多様性が重んじられている

イタリアや他の国でもチーズは作られていますが、フランスでは実に2000種以上のチーズが作られており主だったものが、1200種が販売されており、うち、46のチーズは、認証制度「AOP(Appéllation d’Origine Protégée: 原産地保護呼称)によって原産地が保証されています。フランスでは、地域によって気候や土壌、飼育法などが異なり、その地域特性がチーズに反映されているという考え方があるのです。また、AOPによって該当地域で正当に生産されたものであることがしっかり証明されるため、消費者にとっても安心です。地域ごとに多様なチーズがあり、それぞれに生産背景となるストーリーや生産者がいることを大切にしているのです。

チーズの保管で大切なのは温度管理

店内で、一際存在感を放っているのがチーズの保管庫兼熟成庫です。透明なガラスケースの中にはさまざまなチーズがずらりと並び、圧巻!チーズに適した温度は4,5度〜7,8度、湿度は80〜90%。保管庫ではチーズにとってベストな状態が保たれます。大きな塊から小分けに切りわけられたチーズはぴっちりとラップやワックスペーパー(オーブンシート)で包み、空気に触れさせないように密閉をします。乾燥は厳禁。そして湿度からも遠ざけなければなりません。ちなみに、これまで取り扱った中で一番大きなサイズのチーズは、1個70kgもするエメンタールチーズ!ヨーロッパから届いた後も、チーズにバクテリアがつかないように、保管庫で熟成をかけながらプロが香りやカビを丁寧にチェックしつつ手入れをします。

 自宅でチーズを保管する時は乾燥と湿度を避けて、ぴっちりラップをしてから保管容器に入れるなどすることで、チーズをより良い状態に保つことができます。ラップの香りがチーズに逆についてしまうこともあるため、無添加のラップを選ぶと香りがつきにくいでしょう。なお、解凍した時に本来の風味を損なってしまうので、チーズは基本的に冷凍NGです。

5種類のチーズテイスティング

では、お楽しみのテイスティング!5種類のチーズについてくわしく見ていきましょう。

ハードタイプチーズ: コンテ             コンテは1200年代に書かれた書物に登場するほど歴史が古く、最もフランスで広く親しまれているチーズ。​フランスでAOPの認定が下りているチーズの中で生産量が最も多く、出荷前には正式な製法で作られたコンテであるというブランドロゴが入れられます。カットの実演では、ホールで40kgにもなる大きな円盤形のコンテチーズが細いワイヤーを使ってあっという間にきれいに真っ二つになりました! 

コンテは、外側の淡いベージュ色の固い外皮を取り除き、内部の麦わら色〜アイボリー色の部分を食べます。ミルクや干草の香りがして、食感はしなやか。牛のミルクの甘味と柔らかな塩味があります。熟成が進んだコンテは、熟成度によってクリーミーでバターのような味わいから皮のような香りをまとうまでに変化。熟成が進むと余韻の長いうま味とシャリシャリとした結晶が加わります。今回のイベントに登場したのは、出荷時18カ月のものをアトリエで追熟させた24カ月頃のコンテでした。

コンテはそのまま食べるのもおいしいのですが、定番の食べ方としてはクロック・ムッシュやサラダがあります。他にもハム、卵、コンテのそば粉のガレットなど、フランスの代表的な料理に多く使われています。

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白カビタイプチーズ:ブリー・ア・ラ・トリュフ

ブリーチーズは1000年以上前から貴族に愛されてきたチーズで、カマンベールと同様に白カビタイプです。ブリー・ア・ラ・トリュフはブリーチーズにトリュフとマスカルポーネのクリームを挟んだ冬のホリデーシーズンには欠かせない贅沢なチーズ。「チーズの王様」とも呼ばれるほどです。19世紀に活躍した「シェフの王と王のシェフ (le roi des chefs et le chef des roi)」の作者で知られるマリー=アントニン・カレームの料理本に、トリュフの入ったブリーチーズの痕跡が見られます。ブリー・ア・ラ・トリュフは、切ったそばから流れ出すほどとろりと濃厚なブリーチーズ、芳醇な香りのトリュフ、程よい爽やかさのマスカルポーネの組み合わせなので、とても華やか。そのままカットして、もしくはパンに載せそのままカットして、もしくはパンに載せてたべるだけでも十分美味。

今回提供されたチーズプレートの上にあるミカンで口の中をすっきりとさせたり、コンフィチュールや生ハムで味変しながら食べると、個性の異なるチーズをさらに楽しむことができました。

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ウォッシュ・セミハードタイプチーズ:ルブロション

「二度絞る」という意味のルブロションは、サヴォワ地域を代表するチーズのひとつで、13世紀にトーヌ渓谷の高山農場で生まれたのが起源とされています。当時、牧草地を借りていた農民は牛乳の生産量に比例した税金を領主に支払わなければならなかったのですが、農民は重い税金から逃れるために、領主がミルクの生産量を測定する日の朝に牛から完全に搾乳しないでおいて、領主が去るとすぐに残りのミルクで自家用のチーズを作ったのが由来とされています。そのため「Reblache(二度絞ったミルク)」から製造された二番目の搾乳ミルクは「Reblochon(ルブロション)」と呼ばれるようになったのです。

朝と夜に牛から搾られたフレッシュなミルクを使って(しかも牛はアボンダンス種のみを使用)、14世紀と変わらぬ伝統的な製法で今も作り続けられています。高湿度なセラーで週2回ほど洗われながら3週間程度熟成させるので、ミルクの濃厚さとエピセアの木の上で熟成されたチーズらしい香りを楽しむことができます。

クリーミーで柔らかい食感ですが、まずはそのまま食べて。サンドイッチの定番の具としても親しまれていますが、薄くスライスしたルブロションをじゃがいも・ベーコン・玉ねぎを炒めたものの上に乗せてオーブンで焼くサヴォアの伝統料理「タルティフレット」にもよく使われています。パスタの上にスライスを乗せてオーブンで焼く料理もあります。

青カビタイプチーズ:フルム・オ・カシス

フルム・ダンベールはフランス中南部の山岳地帯オーヴェルニュ地方のチーズ。「Fourme(フルム)」とは、円筒形のことを指します。青カビチーズの中でも白い部分が多くクリーミーなため、酪農家たちからは「高貴な青かび」と呼ばれるほど。いかにも青カビタイプのチーズ、という見た目の割に味わいは比較的マイルドなのでブルーチーズの濃厚さが少し苦手な初心者にもおすすめです。ねっとりしっとりしたチーズですが、今回は製造工程の途中でチーズをカシスのリキュールで洗っているので、チーズに湿気がさらに出て、しなやかさとクリーミーさに加えて粘り気のあるテキスチャーも感じられます。味わいは、塩気もありながら丸みがあり、強過ぎず穏やかです。

食べる時には、ナッツ、レーズン、はちみつなどとの組み合わせがおすすめ。ピザやキッシュに入れたり、鴨肉やビールのステーキに合わせるソースとしてもピッタリでしょう。チーズフォンデュの隠し味に使う裏技も!

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ウォッシュタイプチーズ:ポン・レヴェック

ポン・レヴェックは、フランスのノルマンディー地方で生まれ、ノルマンディー地方で作られるチーズの中で、最古の歴史を持つと言われているウォッシュタイプのチーズです。17世紀で最も名高いチーズのひとつと言われ、多くの人に愛されてきました。当時有名だったカマンベールチーズが円形だったので、それと区別するために特徴的な四角い形をしています。

ウォッシュタイプは味が濃厚で苦手なイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、ポン・レヴェックはとろけるような優しい食感で、食べやすい繊細な味わい。初めてウォッシュタイプのチーズを試される方にもとてもおすすめです。今回紹介した5種類の中では最も香りの強いチーズです。冷蔵庫で保管する場合には、ラップで包んだ後にタッパーに入れることをお忘れなく。(後半に続く…)

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Contributor

池水 みと
池水 みと

エディター・ライター

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