日本にクイニー・アマンがやってきた時は、大騒ぎでしたね。私のところにもテレビの取材が来て、オンエアを見たら「この方がクイニー・アマンを広めたお菓子研究家の、、、」と紹介され、びっくり!その後、友達のブーランジェやパティシエから電話かかってきました。「おいおい、俺らも作ってるよ!」(笑)。このお菓子、実はバターが沢山入る背徳の味・・・。
成り立ちはこうです。1860年ごろ、ブルターニュ地方最果てのフィニステール県、ドゥアルヌネで大人気だったブーランジュリー。夕方ついに売るものがなくなってしまったので、オーナーのスコルディアさんが、厨房にあったバター、粉、砂糖で即興創作したというのです。そんなシンプルな素材でも、美味しさの決め手はブルターニュの美味しい有塩バターだったと言えます。
フランスといえば、バターの国、というイメージですが、バターを豊富に使用するのは、美食王国リヨンあたりまでで、そこから南はオリーブオイルが主流です。フランスの主なバターの生産地は、ノルマンディーやブルターニュ、ポワトゥー・シャラント地方。とくにノルマンディーのイズィニー、ポワトゥー・シャラント地方のシャラント・ポワトゥー、有名なエシレのバターを生産するドゥー・セーブル、シャラントは、ローヌ・アルプ地方のブレス。この5つの銘柄は、優良な農産物に与えられるA.O.P.を獲得しています。
フランスのバターは、全て発酵バターと言えます。殺菌法がまだ発見されなかった時代、農家製のバターは自然に発酵してしまいました。今では、殺菌された乳を使用するようになったので、製造過程で乳酸菌を加え発酵風味をつけ、かつての香りを再現しているのだと言います。その乳酸菌の種類、発酵、熟成によってさまざまな風味のバターが出来上がります。
多くのフランス人が使用するのは無塩バターです。唯一有塩バターを使用するのがブルターニュ地方。ブルターニュでは美味しい塩(ゲランドの塩)が生産されるので、そんな背景から塩味をバターにも加えています。その濃度は2種類。ドゥミ・セルと呼ばれる塩分2~3%のバターと、サレと呼ばれる塩分5%のバター。そんなバターをたっぷり使ったクイニー・アマンの甘じょっぱい味は、ザラメせんべいに通じる美味しさ。日本人を虜にしてしたのもわかります。