フランスにもチーズケーキがあることをご存じでしょうか?フランスでは、チーズは食後にパンとワインといただくものという概念があるので、そう簡単に甘いお菓子になったりしません。しかし、フランスでも地域によっては、チーズを生産している地域にはチーズのお菓子があります。
ロワール地方アンジェに伝わるチーズデザートは、牛乳からできる熟成させないフレッシュチーズ、フロマージュ・ブランを使用してクレメ・ダンジューというレアチーズケーキを作ります。これは、ちょっと悪くなりかけたクリームに卵白などを混ぜてお菓子にして売ってしまおうというのが発案のきっかけ。今ではチーズを使ってひとつの完成したデザートとして作られています。
ポワトゥー・シャラント地方のポワチエを歩けば、UFOのような形をした「トゥルトー・フロマジェ」という真っ黒こげのチーズケーキを見かけます。これは8世紀初頭のポワチエの戦いで、アラブ人が置き去りにした山羊乳からつくったチーズで作られたとのこと。今ではフロマージュ・ブランを使用して作ることが多いのですが、表面を焦げさせるため高温で焼き上げます。外は真っ黒でも中は、絹のようにきめ細かく優しい食感。
ナポレオンの生誕地、コルシカに行くと、ここはもう牧草は育ちませんから山間で飼う羊や山羊のチーズが主流です。羊か山羊、またはその両方の清乳からコルシカを代表するチーズ、ブロッチュが作られます。そして、そのブロッチュを使って作るのがフィアドーヌや写真のImbrucciataという伝統的なチーズケーキです。特にフィアドーヌは、家庭で日常に作られているお菓子。これを作るたびに、コルシカを離れる日、友人のママンが、手作りのフィアドーヌをタッパーに入れて空港まで持ってきてくれたことを思い出します。
さて、日本のチーズケーキは、ケーゼクーヘンと呼ばれるチーズケーキを真似て作ったのが始まりと言われています。それを大々的に広めたのがモロゾフ。昭和42年ごろにはすでに発売され、爆発的にヒット。その後スフレチーズケーキ、タルトフロマージュなどのバリエーションが考案されました。ヨーロッパからもチーズが輸入されるようになるとチーズ使いにも多様性が生まれ、チーズケーキというジャンルは日本で独り歩きしていきました。いつのまにか国民的お菓子になりましたね。
【Imbrucciata インブルチアータ】材料 ingrédientsと作り方 procédé 6個分
◇パートブリゼ pâte briséee
- 薄力粉 150g farine
- バター 70g beurre
- グラニュー糖 大匙1 sucre semoule
- 塩 少々 sel
- 全卵 25g oeufs entier
卵以外をフードプロセッサーにかけてバターを細かくし、卵を入れてまとめラップに包んで3時間以上冷蔵庫に入れておく。その後2ミリに伸ばして、直径10cmの円に抜く。
◇アパレイユ appareil
- ブロッチュ 200g brocciu frais
- グラニュー糖 70g sucre semoule
- 卵黄 1個 oeufs jaunes
- 全卵 2個 oeufs entiers
- レモン汁 大匙1 citron
- レモンの皮のすりおろし 1個分 citron rappé
上から順に混ぜる。
焼成:円形に抜いたパートブリゼに乗せて、周囲を手で折り込む。200℃で20分ほど焼く。
*ブロッチュは入手が難しいので、水切りしたフロマージュ・ブランで代用可能です。
Contributeur
フランス菓子・料理研究家